iDEA→NEXT2017にてビジネス部門グランプリを獲得した「一般社団法人えんがお」の代表の濱野将行さんに、これまでの取り組みや展望を伺いました。

 

-濱野さんの現在のお仕事などについて教えてください-

現在宇都宮市内の病院で作業療法士として働きつつ、iDEA→NEXT2017の直後に法人化した「一般社団法人えんがお」の事業としての軌道化を目指して大田原で活動しています。
法人を立ち上げてから、作業療法士を常勤からパートに切り替えてダブルワークでの活動。「時間の使い方など大変な部分も多いですが、暇よりはずっと動いていたいタイプ」と日々前向きに取り組んでいるのが伝わります。

ダブルワークになるので、団体の書類づくりなど苦労しています。と笑って話す濱野さん

 

-学生時代から地域活動や福祉に関心があったのでしょうか-

大田原市にある国際医療福祉大で作業療法士を目指して勉強していたころ、東日本大震災が起こりました。いてもたってもいられず現地のボランティア活動に参加しましたが、現状を変えることのできない自分に強い無力感を感じて「成長したい!」と悔しく思ったのを今でも覚えています。

その後も復興支援や国際ボランティアなど学生時代に多くを経験していくうちに、自分のやりたいことが固まってきたように思います。

 

-学生時代の経験が今に生きているのですね。プロジェクトを始めた動機と背景を教えてください-

高齢者の孤立化とその予備軍の高齢者の存在に気が付いたことがきっかけです。栃木県内には一週間に一回も人と話す機会のない独居高齢者が五千人以上いると言われているのをご存知でしょうか。えんがお発足前から地域の大学生と高齢者を結び付ける活動を行っていた中で、そのような高齢者に出会うことが少なくありませんでした。

人生の最後をさみしさの中で終えていくのはあまりに寂しい。人生の終わり方を整えて希望のある社会作りができないかと思い立ち、自分にできることは何か考えた結果、自分たち若者が高齢者の方の家に訪問して生活支援を行うプロジェクトに可能性を感じ、事業を構想し始めました。

 

-iDEA→NEXTに応募したきっかけを教えてください-

とちぎユースは学生のころから出入りしていて、iDEA→NEXTに参加すれば自分がやりたいアイデアのブラッシュアップの大きな助けになってくれると考え応募しました。

代表の岩井さんが夜中まで熱心に向き合ってくださったのが印象的で、プロジェクトを形にして恩を返したいという気持ちがとても強くなりました。

プログラムに参加する中で、スタッフ以外にも様々な方から応援の声を頂き、自身と覚悟が固まったと思っています。

 

-生活支援ということですが、高齢者の方からの依頼にはどのようなものがありますか-

例えば足の悪いおばあちゃんから爪を切ってほしいと依頼されたりします。足が悪いと足まで手が届かず、本人にはできない。しかし、それだけのために制度を使うなどは難しい。そういった制度の狭間を解決するために動いています。その他、掃除や買い物、電球の付け替えなど、私たちが普通に生活している中では気にならないことで健全な生活が脅かされている方がたくさんいることに驚かされています。

私たちが対応しているような高齢者の問題は、行政でも制度上対応できないことが多かったことから、行政機関から依頼を受けて訪問することも多くなっています。

また、孤立化を解消したいという想いから着想しているため、会話する時間を大切にしています。お茶を飲んでお話を聞かけて頂いたりする時間を依頼された作業の時間以上に取るようにしています。

 

-えんがおの取り組みを通してどんな社会を実現したいと考えていますか-

若者の成長の道筋の先に高齢者が孤立しない社会を作りたいと考えています。生活支援ボランティアの学生のためだけでも高齢者のためだけでもなく、お互いが楽しく地域課題の予防と解消が進んだらいいなと思っています。

困ったときに頼れる人がいる。そんな当たり前の環境を大田原で実現し、他の地域にも同じモデルを広げたいです。

 

-これからどんなことに取り組んでいきたいと考えていますか-

短期的な目標としては、エリア内の高齢者の方から100件の困りごとを聞くことを目標にしています。大田原の高齢者の困りごとは他の地域にも通じるものがあると思うので、高齢者の困りごとの分析と事例発表を行いたいと思っています。

また、こちらから訪問するだけではなく、空き家を活用した多世代コミュニティスペースを作り、地域住民の方がお茶を飲みながら交流を図れるスペースと、コンセントとWi-Fiが使えて学生が勉強などに使えるスペースを設け、自然と交流が図れる空間づくりをしていきます。

改修のためのクラウドファンディングを行い、目標金額を大きく上回る130万円以上の寄付を集めることにも成功したそう

 

-常にチャレンジしている濱野さんですが、若者に伝えたいことはありますか-

挑戦することって怖いかもしれませんが、挑戦できる時間って意外と短いんじゃないかって思っています。歳を重ねると家庭を持ったり責任ある仕事を任されたりしてくると、リスクを負うことが徐々に難しくなってしまうので、守るものの少ない20代のうちに後悔しないようにやれることをやってほしいと思います。

 

※この記事は、作新学院大学様の1日インターンシップ受講生の皆さんとインタビューさせていただいた際の話を基にまとめられたものです。