事例に学ぼう!地域づくり担い手支援プログラム

地域づくり活動に必要な、たくさんのこと。人の巻き込み方や地域の魅力の打ち出し方、資金の集め方と使い方。そんな「実践者」がぶつかる多くの壁を乗り越えるヒントを、たくさん集めました。

ここでは、全5回、4ヶ月間に渡ったこのプログラムを振り返ってみたいと思います。

class1 2018年12月2日(日)静岡県熱海市に学ぶ
地域資源を掘り起こし、持続可能な熱海へ変革再生

株式会社machimori 代表取締役 特定非営利活動法人atamista 代表理事
市来 広一郎 氏

市来さまは、2つの法人を使い分け、熱海のリノベーションまちづくりを推進しています。

熱海の中心市街地の遊休化した不動産を活用して、新しいコンテンツ、新しい人を呼び込みまちを再生。実際の遊休不動産の活用した事業については、「株式会社machimori」 が主体となり、実施。株式会社machimoriはatamistaの活動から生まれた民間まちづくり会社です。atamistaでは行政とも連携しながら、リノベーションスクール熱海を開催するなど、リノベーションまちづくりを推進する人財育成、まちづくり会社育成を行っています。

講義では、寂れた観光地の代表とまで言われた熱海をV字回復させつつあるその取組みの真髄を3時間に渡って聞いていきました。

熱海を持続可能な街にするためにまず行ったのは、それまで観光一本槍だった考え方を、地域の人にとって住みやすく愛される熱海に、という考え方の転換。地域の人たちがファンでなければ、どうやって観光客をファンにできるのかというコロンブスの卵的発想です。

しかし実現までは困難の連続。地域や行政との連携、資金不足と株式会社の立ち上げ、様々なチャレンジの結果として、今の成果があることが見えてきます。

class2 2018年12月16日(日)新潟県十日町市・津南町に学ぶ
成果を挙げる組織マネジメント

大地の芸術祭・越後妻有アートトリエンナーレ 十日町市 産業観光部 観光交流課 芸術祭企画係 係長
玉村 浩之 氏

「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ」は、過疎高齢化の進む日本有数の豪雪地・越後妻有(新潟県十日町市、津南町)を舞台に、2000年から3年に1度開催されている世界最大級の国際芸術祭です。

農業を通して大地とかかわってきた「里山」の暮らしが今も豊かに残っている地域で、「人間は自然に内包される」を基本理念としたアートを道しるべに里山を巡る新しい旅は、アートによる地域づくりの先進事例として、国内外から注目を集めています。前回2015年は約51万人の来場者数を記録し、約50億の経済効果や雇用・交流人口の拡大をもたらしています。

地域づくり活動がそもそも想いだけでは続けることのできない難しさもあるなか、さらにハードルの高いアートプロジェクト型の地域づくりとして自立・継続できている取り組みには、多くの研究者がそのマネジメントを分析していると言われています。

講義では、ここでしか聞けないイベントの裏側をじっくりをうかがいました。

大地の芸術祭の目的は、「地域が元気になる」こと。その目的のために、あくまで手段として行っているとということです。地域づくりの原点に忠実に積み上げてきたものが、ここまで世界的に支持されるイベントとなったのですね。

ここまでのイベントであっても、基本は地域の理解と連携、多くの方の協力を集めるなど、地道な努力の積み重ねであったことが見えてきます。また、作品の維持管理や、インバウンド対応、止まらない過疎高齢化の現実など、様々な課題も見えてきます。

【ウェブメディアに掲載!】

先日行われた栃木県地域づくりスキルアップ講座「越後妻有アートトリエンナーレ 大地の芸術祭」の様子が、ウェブメディア「栃木のしゅし」に掲載されました。ぜひご覧ください!

https://tochigi-seeds.com/chiikizukuri-skill-up-kouza

class3 2019年1月19日(土)栃木県大田原市に学ぶ
栃木県の人・資源を活用した持続的なビジネス

株式会社大田原ツーリズム 代表取締役
藤井 大介 氏

大田原ツーリズムは官民一体で出資した日本全国でも非常にまれな官民一体の株式会社です。

大田原市は観光地ではないが、素晴らしい田園地帯・田園風景と、この場所に根付く農業を生かして人を呼び込むことを目指すグリーンツーリズム事業。農業を主体とした普段営まれている産業を体験プログラム化し、訪れる方に提供。国内は遠く九州から、海外からは台湾やインド、ベトナムから訪れています。体験と交流からリピーターも多いといわれています。

また農家民泊や農村にいる方との交流を通じて、自分たちがやっていくという自覚も育まれています。物や施設ではなく、そこにいる人に感動し、地域に対して興味が湧くことを目指しているのが大田原ツーリズムの活動です。10年後、20年後の大田原の地域の産業、歴史、文化、そして何より農村の担い手を作っていくために、グリーンツーリズム活動を行っています。

講義では、観光地ではない大田原を舞台にしたグリーンツーリズムが、世界的にも評価を受け、リピーターも続出するに至った、様々な取り組み・工夫を、ここだけの裏話を交えつつつまびらかに紹介していきました。

class4 2019年2月17日(日)東京都に学ぶ
多様な資金調達から自立した事業へ。資金調達と情報発信

NPO法人CANPANセンター 代表理事
山田 泰久 氏

NPO法人CANPANセンターは、日本財団と合同で市民、NPO、企業などの活動を支援し、連携を促進することで、民間主体のより豊かな社会づくりに貢献することを目指すソーシャルプロジェクト「日本財団CANPANプロジェクト」を実施しています。

主に、NPO×情報発信、ソーシャルメディア、オンライン寄付、助成金、IT・Web、ノウハウ、ネットワーク、出身地などの文脈でセミナー開催、セミナー講師、プロジェクト、情報発信などを行っています。

NPO活動の過程で誰もが悩む、情報発信活動から資金調達。実は、活動の様々なところでやり方のヒントは隠れています。日本全国のNPO活動と関わってきた事例など交えながら、今すぐにでも役に立つノウハウをたくさんお聞きしました。

特にNPOが弱いと言われる情報発信と、資金調達ですが、技術や人材が足りなくても工夫一つで効率的な実施ができることが、見えてきました。

class5 2019年3月2日(土)山形県川西町に学ぶ
地域づくりキーパーソンの取り組む事例

NPO法人きらりよしじまネットワーク 事務局長
高橋 由和 氏

山形県東置賜郡川西町吉島地区の全世帯が加入する同法人は、自主防災組織事業、介護予防と生涯学習事業、地産地消・交流事業、地域環境保全運動、子育て支援・青少年健全育成事業、地域のスポーツ拠点づくりなど、多世代が交流し、自らがその運営を担うスタイルで、さまざまな事業を展開しています。

「地域住民があらゆる分野で、こころ豊かで一人ひとりが輝けるまちづくり」を目的として、地域のコーディネーターとしての役割に徹し、行政や他団体との協働も積極的に推進しています。

講師の高橋氏は、上記の創設から関わる中心人物の他、山形県地域活動支援アドバイザー、内閣府地域の課題解決のための地域運営組織に関する有識者会議委員、総務省暮らしを支える地域運営組織に関する研究会委員など、多数の役所で活躍されています。

もともと民間企業で活躍されていた高橋さまは、過疎化の進む山形県吉島地区の再生と地方自治を住民自ら実現するために、様々な取り組みを積極的に行っています。

そこには旧来の非効率な地方自治の組織運営体制を、反対意見も多い中で合理的な形に組織改革し法人を設立し効率化していったり、ICTの活用、プロフェッショナル人材の育成など、民間出身のノウハウも活かした積極的な変化を推進してきました。

行政とちょうどいい距離感を維持しながら、自立した活動を行い、協働を推進し、住民の求めるものを実現する。その根底には強い地元愛があることが感じられます。

 

まとめ

地域づくりスキルアップ講座は、4ヶ月に渡って、全国の様々な地域づくり事例のノウハウを紹介してきました。これらは、ただ知るだけでは意味がなく、私達自身が自らの地域でこのノウハウを実践し、よりよい地域を作り上げていくことが重要です。

社会課題がある限り、私達は自ら考え、実践し、現状を変えていく努力を促進する地域づくりプレイヤーとして活躍するステージを広げていきたいですね。

とちぎユースでは、今後もよりよい地域づくりを推進するための様々なプログラムを実施していきます。最新の情報は、当サイトやFacebookTwitterなどでチェックしてみてください。